核武装の彼

 2007参院選政見放送を何とはなしに眺めていたら、とんでもない候補者がいた。掲げているのはなんと“日本に核武装を!”だ。彼によれば日本は諸外国から様々に蹂躙されているという。核武装さえすればそれが解決するというのだ。南京大虐殺はウソで、総理大臣は必ず靖国神社に参拝しなければならないそうだ。そこには憲法9条も、歴代の政府が継承した非核三原則も、政教分離の大前提もない。
 あれ、こんなん言っても立候補できるんだ、という新鮮な感想。政見がたとえ憲法違反でも、言論の自由があり、被選挙権が与えられるという自由。そして仮に彼が有権者の支持を得れば、しっかりと当選することができることを考えた。
 彼の政見に妥協と遠慮はなく、ただ話し方がたどたどしかった。妥協の産物をさも自説のごとく雄弁に語る有力政党の人たちに照らして、どちらが立派な人物なのだろう。そしてこの自由すぎるほどに過激な彼が、これまでにどんな人生を歩んで、どんな経験と希望、挫折を味わってきたのかを知りたい気持ちにもなった。人は言葉に責任を持たなければならないと思うからだ。